まえがき
先日、文芸をしている高校生のみなさんを対象に、短歌についての講演を行いました。
この講演のなかで「歌会はいいぞ」ということもお話ししたのですが、終わってから「でも、自分が高校生の頃、歌会ってどうやっていいのかよくわからなかったな……」ということにも思い至りました。
歌会の方法は特に定められたものがあるわけではなく、自由な方法で行って良いのですが、一方である程度の共通の型というか、「だいたい多くの場所で、この流れで行われている感じがある」という基本的な構成があります。
そこで本稿では、
- 歌会に参加したいひと
- 歌会を開催したいひと
を対象に、基本的な構成の歌会についてマニュアルを記載します。
歌会のお役に立てば幸いです。
歌会とは?
参加者が短歌を持ち寄って、それぞれの短歌について感想や批評を交わす会。
基本的な歌会の流れ(参加者編)
歌会開始まで
歌会がはじまったら
- 提出されている詠草の一覧などが配布されるはずなので、それを熟読。気になる短歌や、なぜその短歌が気になるのかという理由などについて、自分なりに考える。
- 詠草一覧の短歌について、1で考えた感想や批評を参加者みんなで言い合う。
- 全部の短歌について、2を行う。
- 歌会終了!お好みでご飯会や飲み会へ!
⚠️注意点⚠️
- 歌会は、短歌の読みを広げ深める場。他の参加者の話をよく聞き、自分の考えを丁寧に伝えること。
- 詠草提出の際、ルビや括弧書き、空白1字空けなど特殊な表記については注記するのが望ましい(環境によっては空白が半角になったり全角になったりする、ルビが括弧書きになる、などもあるため)。
- 歌会の進行方法は上記のほかにも様々なバリエーションがあるため、司会の指示をよく聞くこと。
- 短歌に票を入れて行う歌会では、自分の短歌には票を入れないこと。
- 詠草一覧の短歌に作者名を出さない(無記名制と呼ばれる)歌会の場合、基本的に自分の短歌がどれか歌会中に明かさないこと。自分の短歌にコメントを求められても、客観的に批評をすること。
- 作者の了承を得ずに、SNSやブログなど不特定多数が見る可能性のある場所に他人の詠草を公開しないこと!*4
歌会の開催方法(主催する場合)
歌会開始まで
- 以下の内容を設定して告知。
- 会場
- 日時
- 内容(自由詠とか題詠とか)
- 詠草提出先
- 詠草〆切
- 参加者からの詠草が集まったら、詠草の一覧を作る。PCで作っても手書きでも、見やすければOK。
- 歌会前あるいは歌会開始時に、2の詠草一覧を参加者に配布。
歌会がはじまったら
- 司会として、参加者に歌についてのコメントを求める(「では〇〇という歌について、××さんお願いします」という感じで)。
- 「この歌について何かありませんか?」などと発言したい人を募りつつ、コメントをお願いして1首について複数の人の意見を引き出す。
- 1~2を繰り返し、全部の詠草についてコメントを行う。
- 歌会終了!お好みでご飯会や飲み会へ!
⚠️コツや注意点など⚠️
- 詠草一覧では、歌に番号を割り振ると進行が楽。
- 発言しやすくするため、詠草一覧には作者の名前を明かさずに歌のみ掲載することが多い(無記名制)。この場合、歌会の終わりに解題(作者発表)を行うのもあり。
- なるべく作者本人には当てないようにすることが多い。
- 「参加者から発言したい歌に票を入れてもらって、それを目安に進行する」「票は入れずにコメントのみを行う」など、歌会の進行方法はいくつもある。ここは司会の匙加減で。
- 会場(Skypeなどオンラインでの歌会であれば回線)のキャパシティなども考慮して、必要であれば定員を設ける。
- 限られた時間で歌会をすることがほとんどなので、1首あたりの時間配分を気にすること。事前に詠草を配布して、予めどの歌に票を入れるかなどを考えて来てもらうのもあり。
- 作者の了承を得ずに、SNSやブログなど不特定多数が見る可能性のある場所に他人の詠草を公開しないこと! このことを参加者にもしっかりと伝えること!*5
あとがき
上記内容は、あくまでも浅野の経験に基づいています*6。この他にも色々な開催方法は伝え聞くのですが、やはり上記の構成が多いかなあという印象です。
ちなみに最近、東北大学短歌会では後輩たちがコミュニケーションツールにDiscordを導入して、Discord上でのオンライン歌会を主に行う試みを行っています。
時々私も混ぜてもらっていますが、SkypeやLINEよりもスムーズでかつ自由度が高く、これまでのオンラインでの歌会とも一般的なオフラインの歌会とも、また違った面白さがありました。
ほかにも良い歌会の方法などがあれば、教えていただければありがたいです。
*1:題などを指定せず、自由に短歌を詠む方法
*2:題に沿って短歌を詠む方法。題に指定されている文字・文を詠みこむ(つまり、その文字・文を短歌のなかで使う)場合や、文字を読み込まずともテーマとして利用する場合などがある。特に後者は「テーマ詠」と呼ばれることもある。
*3:提出する短歌のこと。
*4:これは著作権的な問題についての対策でもあり、歌会に提出された短歌が、歌会後も未発表作品として扱われるための対応でもある。未発表作品として扱われない場合、短歌の賞などには応募できなくなることが多い。歌会によっては「提出された短歌は既発表作品として扱う」というスタンスをとっていることもあるため注意する。
*5:提出された短歌の扱いを既発表作品とするか未発表作品とするかは、基本的には主催者の匙加減ではあるが、多くの場合には未発表作品として扱われているように思われる。既発表作品として扱う場合には、その旨を参加者に伝える必要がある。
*6:私が主に参加していた歌会は、東北大学短歌会と塔短歌会(仙台歌会)。このほか、Skypeなどでのオンライン歌会や、他の学生短歌会・超結社の歌会への参加も経験しました。それぞれ構成にも個性があって面白かったので、これを読んでくれている方にも色々な歌会に出てみることをおすすめします。